第26回岳南会戦没者等慰霊祭が行われました。- 2026年6月7日

 今年も、第26回岳南会戦没者等慰霊祭が去る6月7日(日)、眼下に青々とひろがる水田の向こうに母校を望む貞祥寺慰霊碑前でしめやかに行われました。毎年6月第1週の日曜日10時30分が例会の定例となっています。
 広く岳南会支部役員の皆さんにご賛同いただき、開催を始めて3年目。今年も30人を超える多くの参列者が集いました。また、この日を『平和を考える日』と定めている野沢北高校から、生徒会と「世界を考える会」合わせて4人の生徒が参加、80年前の先輩を偲びつつ、紛争が絶えない今の時代と世界に思いを重ねて平和を希求する決意を、「祈り」に表現しました。野沢北高校の良心はこれからもこのように、確かに未来に継承されていきます。
 初夏の光の中に、貞祥寺ご住職岡本春海師の深い読経の声が流れ、参列者一同237人の先輩方のご冥福を祈り、「非戦」への誓いを新たにしました。

吉岡徹会長

柳沢敬校長

 主催者を代表して同窓会の吉岡徹会長、学校を代表して校長の柳沢敬先生、また生徒を代表して生徒会長の3年酒井宗路(さかいそうじ)さん、「世界を考える会」の3年水間琥珀(みずまこはく)さんが追悼の言葉を捧げました。

酒井宗路生徒会長

水間琥珀「世界を考える会」代表

栁田清二佐久市長

中島則保南相木村長

 さらに参列者を代表して栁田清二佐久市長は、昨春に整備され竣工した野戦病院「糸洲の壕」(糸満市)と小池勇助軍医(3回卒)にふれ、一連の事業をとおして、象徴としての「糸洲」の意味が深化したことを述べ、小池軍医の守るべき対象は故郷と家族であり、その思いを継承し掌を合わせて「非戦」を誓うことができることを有難いと思う、と語られました。
 また、中島則保南相木村長は、自身の家族にもあった戦争の深い傷にふれながら、昭和天皇の「開戦の詔」を読んでいただきたいと述べられました。歴史を読み解くために、現在の感情や常識で往時を評価するのではなく、時代の渦中でどのような言動が可能であったか、深く沈潜して考える必要を語りかけました。
 慰霊祭終了後、会場を「十一屋」移して会食、しばし先輩方を偲ぶ時間を過ごしました。

 同窓会長、学校長、酒井さん、水間さんの追悼の辞(全文)は下記のとおりです。

<吉岡徹同窓会長>  追悼の言葉
 追悼の言葉

 第二十六回岳南会戦没者慰霊式に当たり、岳南会を代表して追悼の意をささげます。
 先の太平洋戦争において犠牲になられた二百三十七名の先輩の皆様、あの大戦が終結した昭和二十年から八十一年が経過しました。
 この間私たちは、皆様を失ったあの忌まわしい戦争の反省に立って、非戦の誓いを高く掲げて制定された日本国憲法のもと、内外ともに一切の戦火を交えることなく、平和な時を過ごして参りました。
 しかし、世界の現状は平和一筋では決してありません。ロシアによる四年余に及ぶウクライナ侵攻、またイスラエルとパレスチナのガザ地区をめぐる三年余にわたる紛争、加えて本年二月に勃発したアメリカの先制攻撃に始まるイラン侵攻等々、いずれもなお終息の見えない状況が続いております。
 一方、我が国の国是たる憲法の基本原則、なかんずく「平和主義」をめぐっては、改憲へ前のめりの現政権の姿勢も相俟って、理念を揺るがすような様々な議論が沸き起こっております。
 このような状況において私たちは、我が国が戦後一貫して築いてきた「平和日本」、その根幹を成す「非戦の誓い」をゆるぎなく、改めてかみしめ、二度と戦争への道を歩まぬことを第一義に冷静に対処して参ります。
 私たちのこうした思いをも包含する施設として、当佐久市は昨年一月、ここに居られます、第三回卒業の大先輩、小池勇助軍医が率いた沖縄県糸満市糸洲の女子学徒隊野戦病院跡の壕を、平和への思いを新たにする場として整備しました。多くの人々、特に修学旅行で沖縄を訪れる全国の高校生諸君にはぜひ訪れてほしい施設であります。
 さて、毎回ご報告しております母校、野沢北高校と、野沢南校との統合再編による新校創設の進捗状況についてですが、新校を安心して通える進学の拠点校にするべく、柳田佐久市長を会長とする推進協議会のもと、二度にわたる県知事への要望、および提案を行う中で、校地拡幅を実現する等大きな進展をみてまいりました。まだ課題は様々に残ってはおりますが、三年後の開校に向け準備は着実に進行しております。
 一方で私たち岳南会としましては、百二十五年余にわたって築いてきた我が野沢北高校の伝統と文化を新校に引き継がせながら、前身校の一方の同窓会として新校へのバックアップ体制を築くべく準備をすすめております。
 以上、私たち後輩の現在の思いの一端と新校創設への状況をご報告申し上げ、追悼の言葉と致します。
 皆様におかれましては、この高台から母校を見守りいただきながら安らかにお休みください。

合掌

 

令和8年6月7日
長野県野沢北高等学校同窓会
岳南会 会長 吉岡 徹

<柳沢敬校長>  慰霊の言葉
 本日、令和八年度の戦没者慰霊祭、野沢北高校「平和を考える日」にあたり、ご遺族並びにご来賓、岳南会の皆様のご列席を賜り、感謝申し上げます。

 先の大戦で、野沢北高校は、二三七名に及ぶ先輩方の尊い命を失いました。祖国や家族を案じながら戦地に赴き、再び、浅間山を仰ぎ見る母校を訪れ、仲間と語り合い学生歌を歌いたい、そんな願いを果たすことなく、命を落とされた先輩方のご無念を思うと、尽きることのない悲しみとやり場のない怒りがこみ上げてきます。皆さんが平和な時代に存分にその命を燃やすことができていたら、日本に世界にどれほどの恩恵をもたらしたことか、悔しさや虚しさが尽きることはありません。

 ここに、戦争の犠牲になられた全ての方々へ、謹んで哀悼の意を捧げ、ご遺族の皆様方には、深い悲しみを抱えながら、困難を乗り越え、社会の発展のためにご尽力され続けたことに、心からの敬意を表します。

 野沢北高校は、先輩方の遺志を継ぎ、更なる発展に向け新たなステージに上がります。今年三月の文部科学省スーパーサイエンスハイスクール指定を生かし、生徒の科学的な学びを深め、今年度から始まる新校舎の整備、三年後の佐久新校開校に向け、「平和で豊かな未来社会を共創する「知」の探究校」を目指し続けます。野沢北校生は、今日も全力です。難関大学合格を目指し必死に勉学に励む者、仲間と協力して日輪祭の成功を目指す者、全国大会を目標に苦境でも決して諦めず勝利に向かい全力を尽くす者。「骨太の進学校」の伝統は今も健在です。

 世界では、ウクライナ、パレスチナ、ペルシャ湾、ベネズエラ、依然として戦争は絶えることがありません。今日も、大国や権力者のエゴイズムや、経済的利権を奪い合う絶望的で薄っぺらい地政学的国際関係の下で、未来ある尊い命が失われ続けています。こんな時代だからこそ、野沢北高校生はこれからも、有為な主権者となり世界の平和に貢献し続けます。今年も、Change our mindsetを合言葉に、多くの生徒たちが、アジアへヨーロッパへアメリカへ、世界各地に飛び立ちます。

 戦後八十一年、日本は戦争を経験していない世代が大多数です。平穏な日常は、戦争で無念にも散華された先輩方の尊い犠牲と、ご遺族の苦難の歴史の上に築かれたものであることを、野沢北高校の生徒、教職員は決して忘れることはありません。平和の尊さを次の世代に継承する責務を果たし、恒久平和実現に向け、日本が再び誤った道を歩むことのないよう、正義に基づいて行動し続けることを「平和を考える日」にあたり、改めて誓います。どうぞ、ここ貞祥寺の高台から雄大な浅間山を背に躍動する後輩たちの日常と、燦然たりその未来をお見守りください。

 

令和8年6月7日
長野県野沢北高等学校長 柳沢 敬

<生徒会長 酒井宗路>
 若葉の緑が日ごとに濃さを増す季節となりました。
 本日、この岳南会戦没者等慰霊祭に参加させていただけることを、大変光栄に思います。また、このような尊い追悼式典を開催してくださった関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

 第二次世界大戦終戦から81年という長い年月が経ちました。私は戦争というものを知りません。しかし、小池軍医をはじめとする237名の先輩方が祖国や家族、そして未来を思いながら命を懸けて戦われたこと、その犠牲の上に今の平和な社会が成り立っていることを、決して忘れてはならないと思います。先輩方は、戦火の中で「平和な未来を築いてほしい」という願いを抱いておられたのではないでしょうか。その強い思いが、絶えず時代を越えて今の私たちへ受け継がれているからこそ、私たちはこうして安心して学び、日常を過ごすことができているのだと思います。
 しかし、世界に目を向けると、依然として争いは絶えません。2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻、そしてパレスチナ自治区ガザ地区をめぐる武力衝突など、多くの人々が不安の中で生活し、尊い命が失われています。さらに、中東ではホルムズ海峡をめぐる緊張が高まり、世界経済やエネルギー供給への影響も懸念されています。日本は多くの資源を輸入に頼っているため、物価の上昇や円安など、私たちの生活にも影響が及んでいます。遠い国で起きている争いも、決して他人事ではありません。ニュースで流れる映像を見るたびに、戦争は決して過去の出来事ではなく、今なお世界のどこかで起きている現実なのだと痛感し、胸が痛みます。
 また、日本でも戦争を体験された方々の高齢化が進み、直接お話を聞く機会が少なくなっています。そのため、戦争の記憶が少しずつ薄れつつあります。だからこそ、戦争を知らない私たち若い世代が、記憶や教訓を自ら学び、次の世代へ伝えていくことが大切だと思います。歴史を知ることは、単に過去を振り返るだけではありません。同じ過ちを繰り返さないために、平和について考え続けることにつながるのだと思います。
 私は、平和とは「当たり前」に存在するものではなく、多くの人々の願いや努力によって守られてきたものだと感じています。一人ひとりが他者を思いやり、違いを認め、争いではなく対話によって問題を解決しようとする姿勢を持つことが大切なのではないでしょうか。
 本日の慰霊祭を通して、改めて戦争で亡くなられた方々への感謝と哀悼の意を胸に刻むとともに、平和な社会を未来へつないでいく責任を深く考える機会にしたいと思います。そして、二度と戦争の悲劇を繰り返さないことを誓い、慰霊の言葉とさせていただきます。

野沢北高等学校 生徒会長 酒井宗路

<「世界を考える会」代表 水間琥珀>

 佐久の山々が鮮やかな緑に包まれ、吹き抜ける風に初夏の訪れを覚える季節となりました。本日、この厳かなる戦没者等慰霊祭に、野沢北高校世界を考える会代表として参列させていただけることに、心より感謝申し上げます。
 今から八十一年前に終結した第二次世界大戦において、戦火の中で未来を奪われ、志半ばで亡くなられた二百三十七名の先輩方。 終戦から八十一年という長い歳月が流れ、当時の記憶を直接語ってくださる方々は年々減少しています。しかし、私たちはその歴史を決して「遠い過去の出来事」として風化させてはならないという、強い想いを抱いています。 今、私たちが現在の野沢北高校で、何気ない日常を享受し、学友と語らい、それぞれの未来を自由に描き、選択できる環境にあること。それは決してたまたま手に入ったものではなく、多くの尊い命の犠牲と、平和を希求し続けてきた先人たちの歩みの上に成り立っている、かけがえのない遺産です。
 当時、先輩方も私たちと変わらぬ若さで、野沢北高校で夢や希望を胸に抱きながら日々を過ごされていたはずです。それにもかかわらず、時代の大きな潮流に翻弄され、校舎を後にせざるを得なかった無念さ、そして家族や故郷を想いながら戦地へと赴いた筆舌に尽くしがたい心中は、現代を生きる私たちには計り知れません。だからこそ私たちは、過去の悲惨な歴史から目を背けず、その犠牲の重みを深く胸に刻み続けなければなりません。先輩方が命をかけて守ろうとしたこの平穏な社会を、次の世代へと継承していくことこそが、今を生きる私たちに課せられた大いなる責任です。
 しかし現在の国際社会へ目を転じれば、ウクライナやガザ地区をはじめ、今なお紛争や対立の絶えない地域が数多く存在します。私たちが当然のように捉えている平和とは、決して恒久的に保証されたものではなく、人々の絶え間ない外交的努力や対話によって維持されている極めて危ういものです。ひるがえって国内に目を向けても、様々な社会的不安が広がる中で、私たち若い世代の「社会への無関心」や「政治的関心の低下」が深刻な課題となっています。こうした時代だからこそ、私たち自身が歴史を自分事として学び、先人の想いを受け継いで、平和な社会を築く主体的な担い手にならなければならないと強く実感しています。 私たちはまだ、知識も経験も浅い学生にすぎません。しかし、「世界を考える会」の活動を通じてピーストークや国際交流などに積極的に参加し、世界の現状や平和のあり方について多角的な視点から向き合い、発信を続けています。
 本日の慰霊祭にあたり、戦没者の御霊に心からの敬意と感謝を捧げるとともに、世界の恒久平和と人々の幸福のために、一人ひとりが命の尊厳を尊び、二度と戦争の悲劇を繰り返さない未来を私たち自身の手でつくり上げていくことを、ここに誓います。 我らが野沢北高校の先輩方、どうか私たちの歩みを見守っていてください。皆様の安らかなるご冥福を心よりお祈り申し上げ、慰霊の言葉とさせていただきます。

世界を考える会 代表 水間琥珀