第24回岳南会戦没者等慰霊祭が6月2日(日)に行われました。

 護持会から岳南会本会が主催を引き継いで3年目となる岳南会戦没者等慰霊祭が、去る6月2日(日)、貞祥寺慰霊碑前でしめやかに行われました。毎年6月第1週の日曜日10時30分が例会となっています。
 今年の慰霊祭は、広く岳南会支部役員の皆さんにもご賛同いただき、東京岳南会はじめ40人を超える多くの参列者が集いました。また、野沢北高校の生徒代表として「世界を考える会」から6人が参加、80年以上の時を隔てて、なお野沢北高校の良心が豊かな流れをつくり、確かに未来に繋がっていくことを実感しました。
 雨に煙る緑の木々の間に貞祥寺ご住職岡本春光師の深い読経の声が流れ、参列者一同237人の先輩方のご冥福と平和への誓いを新たにしました。

慰霊碑の高台から母校を望む

 主催者を代表して吉岡徹同窓会長、また学校を代表して校長の柳沢敬先生、生徒を代表して3年生の竹内睦喜(ともき)さん(121回)が追悼の言葉を捧げました。また、参列者を代表して栁田清二佐久市長は、慰霊碑にその名が刻まれている小池勇助軍医(3回)にふれ、看護隊「ふじ学徒隊」の女学生に生き延びる勇気を与え自ら命を絶った野戦病院「糸洲の壕」(糸満市)の整備と新春早々の竣工式(式典)、そして平和学習への決意を語りました。
 なお、野沢北高校は今年からこの日、6月の第1日曜日を「平和を考える日」に定めることとしました。

 慰霊祭終了後、会場を移して会食。井出亜夫東京岳南会長のご発声で献杯し、先輩方を偲ぶ時間を過ごしました。

 以下に、同窓会長、学校長の追悼の辞(全文)を掲載します。

 
<吉岡徹同窓会長> 追悼の言葉
 第二十四回岳南会戦没者等慰霊式の開催に当たり、岳南会を代表して追悼の意をささげます。
 先の太平洋戦争において犠牲になられた二百三十七名の先輩の皆様、あの大戦が終わって本年で七十九年が経過しました。
 皆様を失ったあの忌まわしい戦争の反省に立って、非戦の誓いを大きく掲げた新憲法が公布されて七十八年になります。
 しかしこの間、世界は平和一筋ではありませんでした。ことに一昨年勃発したロシアによるウクライナ侵攻という悲惨な戦、および昨年十月に再発したイスラエルとパレスチナのガザ地区をめぐる紛争では、それぞれ数万人の死者と数十万人の難民を生じてなお終息の見えない状況が続いております。
 平和を希求されながら、心ならずも人生を未完のまま閉じざるを得なかった先輩の皆様も、天上からこの現状を憂慮されておられることと存じます。
 このような状況において私たち後輩は、戦後一貫して築いてきた「平和日本」、その根幹を成す「非戦の誓い」をかみしめ、二度と戦争への道を歩まぬよう、全力を挙げて参りますことを、ここに改めてお誓い申し上げます。
 残念ながら昨年よりまたヨーロッパでは領土を占奪しようとする大国による悲惨な戦が勃発し、今なお続いています。平和を心から希求されながら、心ならずも人生を未完のまま閉じざるを得なかった先輩の皆様も、天上からこの現状を憂慮されておられることと存じます。
 このような状況において私たち後輩は、戦後一貫して築いてきた「平和日本」、その根幹を成す「非戦の誓い」をかみしめ、二度と戦争への道を歩まぬよう、全力を挙げて参りますことを、ここに改めてお誓い申し上げます。
 さて、一昨年来ご報告申し上げております母校、野沢北高校と、野沢南高校との統合再編による新校創設の件につきまして現況を申し上げます。
 新校は総勢千人を超える規模の、当佐久地域随一の進学の拠点校にすると位置付けられております。したがって、その設立には私たち同窓会のみならず地域全体の英知を結集して取り組むべきとの思いから、佐久市長を会長とする地域協議会を立ち上げました。目下、新校に必須と思われる校地拡幅の問題を始め、克服すべき具体的な課題に鋭意取り組んでいるところであります。一方でまた、私たち岳南会としては、新校にわが野沢北高校の伝統と文化をいかに継がせていくべきか、これも大きな課題であると考えております。
 五年後の令和十一年には、皆様にこの高台から生まれ変わった素晴らしい新校を見ていただけるよう、地域としっかり連携し総力を挙げて取り組んで参ります。
 以上、私たち後輩の現在の思いの一端と母校の状況を申し上げ、追悼の言葉と致します。
 どうか安らかにお休みください。             合掌

 
<柳沢敬学校長> 慰霊の言葉
 先の大戦から79年目となる今年も、初夏の爽やかな風が心地良い季節がめぐってまいりました。令和6年度、戦没者等慰霊祭にあたり、御遺族並びに岳南会関係の皆様、さらに柳田佐久市長様の御参列をいただきましたこと、野沢北高校を代表して心より感謝申し上げます。

 先の大戦において、祖国や家族のために各地の戦場に散華された、野沢北高校の237名の先輩方に改めて哀悼の意を捧げますとともに、御遺族の皆様方には、癒えることのない深い悲しみに耐えながらも、力強く生き抜かれ、平和な世界の実現のために御尽力されていることに、深く敬意と感謝を申し上げます。

 世界に目を向けると、ウクライナやパレスチナをはじめ争いは絶えることなく、人類の平穏な日常は脅かされ続けています。日本も例外ではありません。野沢北高校は、この慰霊祭の日を「平和を考える日」と定めました。県大会や中間考査、日輪祭に向かう本校生の多忙な青春を象徴する、6月第一日曜に、先輩の無念さ、戦争の悲惨さ、平和の尊さを改めて深く胸に刻み、次の世代に継承する責務を果たし、恒久平和の実現に向け、不断の努力を続けていくことをお誓い申し上げます。

 ダイナマイト王のアルフレッド・ノーベルも、原爆の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーも、科学者として魂を込めた研究の成果が、戦争で多くの罪なき命を無差別に奪う道具と化してしまった事実を生涯嘆き続けました。今、世界の様々な国では、悪しきナショナリズムの信奉者が権力を握り、偏見に満ちた思想を振りかざして戦争を正当化し、人々を戦争に巻き込み、子どもを含めた一般市民の尊い命が失われ続けている、許しがたい現実があります。

 未来永劫、野沢北高校の生徒、教職員は、国家や人種、宗教等あらゆる壁を超え、科学技術の進歩と社会の発展を目指すとともに、思いやりの心を大切に世界の平和、人類の幸福のために学び続けることを誓い、暴力や戦争に断固反対します。

 志半ばで散華された先輩方におかれましては、浅間山を背に佐久の大地で日々仲間と切磋琢磨し、教養を高め、地域に日本に、世界に、そして宇宙に羽ばたいていく後輩の活躍をお見守りいただきながら、安らかに眠られることをお祈り申し上げ、野沢北高校を代表して「平和を考える日」の慰霊のことばとさせていただきます。